はじめに
正直言って、最初は左利き用のロレックスを買うつもりなんてなかった。
「GMTマスターⅡ グリーンランタン」が登場した時、最初に思ったのは「また話題作りのための変わり種か」だった。
しかし、数ヶ月前に友人がクリーンファクトリー版のリンクを送ってきてこう言った。
「一度は試してみろ。これ、着け心地が全然違うぞ。」
そして今、3週間実際に腕に着けてみて、私の考えは180度変わった。
これはただのGMTレプリカではない。時計という存在の感じ方そのものを変えてしまう1本だ。
第1週目 — 「逆さまに着ける」違和感
最初に気づくのは、もちろんリューズの位置。左側だ。
右手で操作しようとすると、そこには何もない。初めて左手で字を書くような妙な感覚。
最初は不便に感じると思っていたが、実際は意外と快適だった。
デスクワーク中にリューズが手の甲に当たらず、装着感がむしろ自然。
「最初から全部こうすればよかったんじゃないか」と思えるほどだ。
クリーンファクトリーはこのモデルのバランスを完璧に再現している。
40mmケースは左右対称に見え、左側リューズも違和感ではなく「意図的なデザイン」に見える。
9時位置に移動したサイクロップスも、数日で見慣れてしまう。
周囲の人たちがすぐ気づくのも面白い。「あれ?なんか違うね」と言われるのは、
レプリカだからではなく、単純に見た目の配置が珍しいからだ。
第2週目 — グリーンに惚れる
屋外の光の下で見ると、黒と緑のセラミックベゼルが“グリーンランタン”の名にふさわしい存在感を放つ。
その緑は派手ではなく、光の角度によって深緑からエメラルドに変化する奥行きのある色味だ。
車内の窓越しに太陽光を反射した瞬間、「ああ、これが人々が夢中になる理由か」と実感した。
黒から緑へのグラデーションは自然で、プラチナで埋め込まれた数字が光を美しく反射する。
過去にNoobやVSのGMTレプリカも扱ってきたが、クリーンファクトリーのセラミックの質は明らかに別格。
色の深み、彫りの精度、そしてベゼル回転の“クリック感”。
どの動作も機械的で確実、まさにロレックスらしい手応えだ。
904Lスチールのケースも見逃せない。光沢にわずかな温かみがあり、安価なスチールとは一線を画す。
派手ではないが、確かに高級感を感じさせる仕上げだ。
第3週目 — ムーブメントに馴染む
3週間目になる頃には、「レプリカを着けている」という意識すら消えていた。
ただ自然に、日常の一部として腕にある。
それこそが優れたレプリカの証拠だと思う。
搭載されている3285クローンムーブメントは驚くほど安定している。
私の個体では日差+4秒程度で、正直スイス製本物より優秀なレベル。
独立可動の時針も完璧に機能し、旅行時の時差調整が本当に便利だ。
ローターの音は静かで、巻き上げ感もスムーズ。
パワーリザーブはおよそ65時間。理論値の70時間にほぼ近い。
日付の切り替えも真夜中にスパッと切り替わる。
この“機械としての誠実さ”が、レプリカであることを忘れさせる。
ブレスレット — 静かな自信
クリーンファクトリーのオイスターブレスレットは称賛に値する。
重量感があり、リンクの可動も自然。安っぽいガタつきや中空音は皆無だ。
センターリンクの鏡面は指紋が付きやすいが、外側のサテン仕上げは美しい。
クラスプの“カチッ”という静かな音が、設計の精密さを物語る。
数日着けていると、もう存在を意識しなくなる。
これこそが理想的なブレスレットだ。
周囲の反応
この時計、人に気づかれる。でもそれは「高そう」だからではない。
「何か違う」と思わせる絶妙な違和感のせいだ。
同僚がこう言った。
「え、左利き用?ちょっと変だけど…なんかかっこいいね。」
この一言が全てを表している。
“変だけど、かっこいい”。
レプリカ界隈でもこのモデルはカルト的な人気を誇る。
フォーラムでは「クリーン史上最高のGMT」と評されることもある。
それは人気のせいではなく、ロレックスが“常識を破った瞬間”を忠実に再現しているからだ。
小さな欠点(どんな時計にもあるもの)
完璧ではない。
角度によっては、緑の発色が本物よりやや薄く見えることがある。
ベゼルの回転も、ほんのわずかに遊びがある。
そしてクラスプのクラウン刻印は、本物よりもやや浅い。
だが、それらはマニアだけが気づくレベルの差だ。
日常的に使う分には全く問題なく、むしろ「着けて楽しむ」ことに集中できる。
使ってみて感じたこと
3週間経つ頃には、左利き仕様はもはや“特別な構造”ではなく“自然な設計”に感じられた。
この時計は会話のきっかけであり、快適性の向上でもあり、そしてデザインとしての個性でもある。
会議でも、ドライブ中でも、料理中でも、常に手元に馴染む。
「バランスがいい」「個性的」「気取らない」— この3つの言葉が似合う時計だ。
まとめ
クリーンファクトリーのGMTマスターⅡ 126720VTNR “グリーンランタン”は、
「なぜ時計が好きなのか」を思い出させてくれる1本だ。
大胆で、技術的に面白く、そして驚くほど日常的に使いやすい。
クリーンファクトリーは単なる模倣ではなく、ロレックスが挑戦した“左利きモデル”という歴史的瞬間を、
見事にレプリカとして再現した。
完璧ではないが、誠実で個性的。
派手ではないが、確実に存在感がある。
それこそが、私が思う「最高のロレックスレプリカ」だ。