ブラックダイヤルにダイヤインデックスを組み合わせたクロノグラフは、一見すると華やかですが、実際には極めて繊細な光学的特性を持ち、わずかな誤差すら露呈させる“仕上げのストレステスト”とも言える存在です。
そのため、クリーンファクトリー ロレックス デイトナ 126503 ブラックダイヤル(18Kゴールドラップ 904L スチール・4131ムーブメント搭載) は、見た目以上に技術的難易度の高いモデルとなります。
本稿では、このモデルを単なるファッション性ではなく「光学・素材・機構の相互作用」から評価し、なぜブラック+ダイヤインデックスのダイヤルが最も精密な再現性を要求するのかを深掘りします。
Ⅰ. ピアノブラック・ラッカーの光学特性
■ ブラックラッカーが“誤魔化しゼロ”とされる理由
本当に質の高いブラックダッカー文字盤は、単なる黒塗装ではなく、以下のレイヤー構造を持ちます。
- 金属ベースの均一処理
- 高密度ブラックラッカーの複数コート
- レベリング層や保護層
- その上に精密パッドプリント
光を吸収するのではなく「鏡のように反射する」ため、下地の極小の歪み、ゴミ、ピンホール、塗布ムラなど…どんな瑕疵も即座に発見できます。
■ コントラスト増幅の問題
ブラックは光の差を最大化し、0.02mmの段差でも影の長さや明度が変わるため、インデックスや文字の高さの不均一が際立ちます。
■ ダイヤモンド × ブラックの難しさ
ダイヤモンドは「鏡面反射」「内部反射」「微細スパーク」の3つの光を発します。
ブラック文字盤ではそれぞれが極端に強調されるため…
- 石の高さ
- 面の向き
- セッティング精度
- クラリティの差
すべてが肉眼で分かるレベルになります。
Ⅱ. ダイヤル構造:ピアノブラック × サンレイサブダイヤル × ゴールドリング
この文字盤は3つの異なる光学表現を組み合わせています。
■ メインダイヤル:深い鏡面ブラック
反射の質が均一で、歪みが無いことが必須。
クリーンファクトリーの最新ロットは濁りが少なく、美しい反射を維持します。
■ サブダイヤル:極細サンレイ仕上げ
ゴールドリング+サンレイの黒地が与える立体感は、明暗差が強く、輝きの帯が角度ごとに走ります。
■ ゴールド・ブラック・ダイヤモンドの三重構成
3色の反射特性が衝突せず、調和しているのが特徴。
ここが他工場との最大の差と言ってよいでしょう。
Ⅲ. ダイヤインデックス ― 高コントラスト下での精密技術
丸型ダイヤは向きを持たないものの、以下の要素で精度が要求されます。
- 直径の揃い
- テーブル面の高さ
- セッティングの均等性
- ダイヤ周囲の黒ラッカーに傷をつけない加工
- 足の位置の一致
ブラック背景では、石の高さが0.03mm違うだけで影の大きさが変わり、すぐに違和感が出ます。
クリーンファクトリーの石は高さが揃い、輝度が均一で、足元のラッカーの乱れも少ない点が評価できます。
Ⅳ. ブラックへのプリント ― 最難関工程
白インクを光沢ブラックに置くのは極めて難しく、
- インクが濃い→滲む
- 薄い→欠ける
- 圧が強い→線が太る
- 弱い→かすれる
特に“DAYTONA” の赤文字は角度で太さが変わりやすく、精度が問われる部分です。
クリーンファクトリーは線幅が均一で、密度も安定しており、文字の縁が非常にシャープです。



Ⅴ. サファイアクリスタル・ARコーティング・レーザークラウン
クリスタルは無色透明で、外光反射を軽減するARを内外に使用。
ブラック文字盤と相性が良く、不要な青みが出ないのが特長です。
Ⅵ. ツートーン構造:ゴールドが“反射の額縁”として機能
126503ではゴールドの反射が重要な役割を担います。
■ 一貫したゴールドトーン
ベゼル/プッシャー/リューズ/センターリンク/ダイヤ座金
→ 色温度が完全に一致しているため、ブラックとのバランスが良い。
■ ポリッシュ×サテンの明暗差
- ゴールドベゼル:強反射
- スチール外側リンク:落ち着き
- ゴールドセンターリンク:アクセント
視線が自然とダイヤルに集中するよう設計されています。
Ⅶ. 4131スタイル・ムーブメントの実力
クリーンファクトリーの4131は「操作感の再現性」に重点を置いた設計です。
- 28,800振動
- 巻き上げの滑らかさ
- クロノグラフのスタート・ストップのクリック感
- リセット時のセンター戻り
- 静かなローター音
- 実測+5〜+10秒/日
特にリセットの“戻りの芯”が改善され、実使用での違和感が減っています。
Ⅷ. ルミノバ:ブルー発光の均一性
インデックスと針に青色スーパールミノバを採用。
ブラック背景のおかげで発光が強く見え、夜間視認性も高いです。
Ⅸ. 装着時の存在感・光の表情・重量バランス
■ 光の動きが劇的
- 昼光:ダイヤが強く輝き、サブダイヤルのサンレイが走る
- 室内柔光:ブラック面が深い“濡れた黒”に変化
- 暖色照明:ゴールドがリッチに光り、ダイヤルが重厚に見える
■ ブレスレット
- ソリッドリンク
- アーティキュレーションが滑らか
- オイスターロックの確実なクリック
- Easylink 5mm で実用性高め
Ⅹ. 結論 ― ブラックダイヤルだからこそ精度がすべて
ブラックラッカー、ダイヤインデックス、サンレイサブダイヤル、ゴールド、ブルールミノバ…
これらは単体でも難易度が高いのに、“全部乗せ”で矛盾なく成立させるのは極めて困難。
クリーンファクトリーの126503は以下を高水準でクリアしています。
- ラッカーの平滑性
- ダイヤの高さと輝きの統一
- サブダイヤルの精密な同心円
- シャープなプリント
- ゴールド色の完全一致
- 4131ムーブメントの安定した挙動
“ブラック+ダイヤ”という最もシビアな条件でここまで整っている例は多くありません。

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